リアルタイムに変化していくオンラインゲーム型の映像インスタレーション。自身のスマートフォンや展示会場内のタブレット端末上から参加し、体験することができる。専用アプリの中で出題される心理テストのような質問に答えていくと「自分のカオ（顔）」を作ることができます。そのカオをアップロードすることで、作品上の惑星に「自分のカオ」を参加させることができます。惑星は9つのカオで構成されており、互いに反応し合うことで多様なドラマを生み続けます。惑星上の賑やかなカオたちは、人間と同じように、卑近なことから高尚なことまでを話し、笑い、泣き、お互いの存在を確かめ合い、そして短くはあっても確かにこの《カオの惑星》の上に存在したことを提示します。

本作では鑑賞者が、バーチャル空間の中で、広い共同住宅の一室に生活する様々な登場人物たち（アバター）に、順番に憑依していく。 音楽を奏でる人、花に水をあげる人、会話をしている人々は互いに交わらず、それぞれ別の現実を生きているようだ。同じ空間に居な がら全く交わらない登場人物 ( アバター ) たちの各々の現実を VR 越しに体験することは自分がアバターの動きを操ることができない ので歯痒いと同時にリアルな体験である。最後には別のアバターに自分が乗り移られるというオチが待っており、自分は常に世界の中 心ではなく、自分もまた誰かにとっての他者であることを実感させられる。

本作で VR 体験者は「彫刻作品」として会場に展示されることになる。鑑賞者は台座の上に設置された VR のヘッドセットと VR 歩行装置（Virtuix Omni）一式を身に付け、銃型コントローラーを手に持ち作品を体験する。シューティング・ゲーム型の本作は銃を撃つことで、だんだんと視界が開け、目の前の景色を獲得することができる。体験の終盤に現れる美術館の奥には宝箱があり、箱を開けると中からカラヴァッジョが描いたメデューサが飛び出す。メデューサに見つめられた鑑賞者は石の彫像に変えられ、最後はその美術館の展示品として台座の上に飾られて体験が終了する。本作は、ゲームに参加するだけではなく、VＲ作品を鑑賞する状況自体を作品化している。

漫画家の諸星大二郎、作「カオカオ様が通る」からインスピレーションを受けて制作をした展覧会。 自己と世界の境界、他者がどのようにして自分以外の存在を認識するのかといった疑問から、他者から見ればその存在のアイデンティ ティそのものといえる表皮について、様々な形で表現した作品を構成した。自身の顔を型にしたオブジェの上に、多様な表皮が液体の ように重なっていく映像、トルソーの上半身と下半身が切り離され向かい合う彫刻、存在しない姉についての小説、そして本人による パフォーマンスが渾然一体となったインスタレーションである。 これらのアイデアは、パンデミックが収束していない中、反動的に生じた皮膚や身体へのオブセッションが起因している。