採択者決定のお知らせ

2005年の書籍刊行以来、「次なる映像の可能性」を探求する実践と成果物を紹介する役割を担ってきた『映像作家100人』が、次世代の映像制作を支援するプログラム「CREATOR GRANT」を立ち上げました。初年度となる本助成では、応募者の中から厳選なる審査を経て、以下のプロジェクトを採択いたしました。

採択プロジェクト

古澤龍《Never Arrives》

《Never Arrives》は、実写の車窓映像に独自の“デジタルのレンズ”(座標変換)を適用し、記録された時間・空間を書き換えることで、日常的経験から乖離した風景を提示することを目指す。そこでは、単一方向の車の移動にもかかわらず景色はシームレスに循環し、決して目的地へ到達しない。この逆説的な体験は、見る人の視点そのものを曖昧にし、時間感覚と空間把握を相対化させる。
本企画では、4K/480fps/HDRで収録済みの車窓素材を基盤に、HDRフォーマットに適合するソフトウェアの開発と制作を並行して進め、成果を二形態で発表する。①映画的鑑賞に適したシングルチャンネル版(4K/120fps/HDR)。②再生構造が生成・更新され続けるジェネラティブ・インスタレーション版。さらに、鑑賞者の見るタイミングや見る視線に応じたインタラクティブ版や3D版への派生展開を視野に入れる。映像内の時間、空間、そしてそれを知覚する観測者との相対関係として生成される「動き」に、もつれを介在させる実験的プロジェクトである。

古澤龍 プロフィール

東京、千葉をベースとして活動するアーティスト。イメージの定着プロセスそのものを制作の対象とし、デジタルおよび物理的な介入を通じて、鑑賞条件やメディウムの条件を変容させ、観者の知覚の枠組みを揺さぶる風景の生成を試みている。主な展覧会に、Rear Window & Real Wonder(HOW Art Museum, 上海)、ICC Annual 2024: Faraway, so close、 Prix Ars Electronica Exhibition 2024 など。2015年よりアーティスト・コレクティブYOFとしても活動する。

審査員プロフィール

庄野祐輔(編集者、デザイナー、キュレーター/映像作家100人編集長)
自主メディアの運営に携わる傍ら、展覧会のキュレーションにも数多く携わる。携わった展示としては、PHENOMENON: RGB展(Laforet HARAJUKU)、Proof of X – Blockchain As A New Medium For Art -(THE FACE DAIKANYAMA)、Web as a Medium (NEORT++ and Objkt.one)、Machine-Made Aura展などがある。オンラインに生息する様々な文化の情報を探求/発信し続けている。

NIINOMI(メディアアーティスト/NEORT株式会社ディレクター)
プログラムをはじめとするコンピューターテクノロジーを駆使した新しい芸術の可能性を探求する。近年は、アルゴリズムによって機械的に出力をし続けるシステムそのものに美的価値を見出しており、”System as an Art”をテーマに、芸術作品を生成するシステム自体を芸術とする活動を行う。

田中大裕(アニメーション研究者/新千歳空港国際アニメーション映画祭プログラムアドバイザー)
東京在住。アニメーション研究者。「tampen.jp」編集長。「新千歳空港国際アニメーション映画祭」プログラムアドバイザーおよびコンペティション各部門選考委員。シー・チェン監督作品『鶏の墳丘』日本配給。シー・チェン日本初個展「Mythos in Ink: A Symphony of Creatures and Contradictions」(CALM & PUNK GALLERY)企画協力。「毎日映画コンクール」アニメーション部門(大藤信郎賞)選考委員。その他、独立系アニメーションの上映、イベント企画・運営、執筆、講演など多数。