Music videoMusic VisualizationMV
Capper – 深海 (Official Music Video)
2024
00:03:51
はじめてこの曲を聴いたとき、感情がばらばらに散らばって、
混乱と静けさが同時に胸の中に広がっていくのを感じた。
悲しみの中にある、かすかな希望。
凍った身体の奥で、消えずに揺れている小さな炎。
そんな矛盾した感情が「ただ、そこにある」こと――
それを、映像としてそっと掬い上げることから、この作品は始まった。
このミュージックビデオは、別れを起点とした、感情の旅路を描いている。
喪失を経験した心が、どのように揺らぎ、やがて受け入れへと向かっていくのか。
その内面的な変化を、色彩設計やライティング、構図の切り取り方、そしてリズムに合わせたカメラの動きで丁寧に織り上げた。
水に沈む部屋、誰もいない深海、夜の都市を駆け抜けるバイク――
そのすべてが主人公の心理状態を象徴し、内面の風景として立ち上がる。
照明には、直接的な光ではなく、反射やシルエットを多用することで、明確な“答え”よりも“余白”を残す表現を意識した。
カメラワークは、静から動へ、タイトからワイドへと波のように揺れながら、心の振幅を可視化するように設計している。
構成としてはストーリーラインよりも感情の流れに重きを置き、視聴者が「感じること」に集中できるように心がけた。
バラバラだった記憶や想いが、ひとつの心象風景として重なり合い、
やがて静かに、ぽとりと涙になる。
その水たまりは、もしかしたら、自分自身の涙でできた海なのかもしれない。
この映像が、観る人それぞれの中にある“深海”と、どこかでそっと響き合ってくれたら嬉しい。